高校卒業後、ガソリンスタンドで働き始めた中本さんは、車の誘導や給油等を通してお客様と関わる中で、接客のノウハウを培っていきます。「粗相のないよう、言葉遣いは非常に気を付けていました。経験や知識のないところから始めましたが、自分の接客や作業に対してお礼を言われることがうれしかったですね」。お客様だけでなく、同僚も含めた人とのつながりや接し方は学びになったと振り返ります。しかし、興味は次第に別の働き方へ。父方の祖父母が営んでいた飲食業と、母方の農業にそれぞれ引かれ、迷った末に飲食の世界へ進む決断をします。
居酒屋に転職した中本さんは焼き物を担当。調理の知識と技術を習得していきます。「焼き上げるための時間やタイミングの判断が難しく、その感覚を身に付けるのが大変でした」。先輩や上司の焼き方を観察してはまね、賄いで練習し、何度も焼いて経験を積むことで感覚をつかみました。その後、居酒屋を渡り歩き飲食業の接客ノウハウを学んだり、高校時代の友人に頼まれて農家の手伝いをしたりと、さまざまな場所や視点から食と関わり知見を広げていきます。そして今年3月、別の友人から紹介されたのが挽きぐるみ蕎麦屋 禅開でした。