兼平さんは旭川市内の高校を卒業後、内定をもらった会社とうまくいかず、ガソリンスタンドでアルバイトを始めました。6年ほど勤める間に主任にも昇格しましたが、売り上げのノルマがきつく退職。次に選んだのはマッサージの仕事でした。
「母親が病弱だったので、本当は子どものころから医者になりたかったんです。でも私の成績では無理でね」と、施術を通してお客様の体を整える職場を選択。温浴施設に設けられた専用ルームでお客様を迎え、痛いところ、治したいところを伺って的確なサービスを提供していました。「料金は決して安くありませんから、会話を通してお客様が何を求めているのかを探って、一番納得いただけるプランを提案するよう心掛けていました」と当時を振り返ります。
5、6年勤めた後、知人の紹介で特別養護老人ホームへ。介護の仕事を現場で覚えながら合間に利用者さんへマッサージを施す日々はやりがいもありましたが、親しく接してきた人たちが亡くなっていく現実に心が悲鳴を上げ、3年ほどで転職します。「人と接するのがつらくなり、工場で黙々と働きたいと思ったんです。元々そういう仕事にも興味がありましたしね」と兼平さん。あいにく思わしい求人がなく、釣具店での勤務を経て現在の職場と出合うには更に2年の時間が必要でした。